〔第6問〕(配点:2)
消滅時効の起算点に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを
組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№6])
ア.不確定期限の定めのある債権の消滅時効は,債権者が期限の到来を知った時から進行する。
イ.契約解除に基づく原状回復義務が履行不能になった場合において,その履行不能による損害
賠償請求権の消滅時効は,原状回復義務が履行不能になった時から進行する。
ウ.無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効は,転借人が転貸借契約に基づい
て当該土地の使用収益を開始した時から進行する。
エ.安全配慮義務違反による損害賠償請求権の消滅時効は,損害が発生した時から進行する。
オ.10回に分割して弁済する旨の約定がある場合において,債務者が1回でも弁済を怠ったと
きは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべきものとする約定があるときには,残債
権全額の消滅時効は,債務者が弁済を怠った時から進行する。
1.アイ2.アオ3.イエ4.ウエ5.ウオ
消滅時効の起算点についての問題です。これを見たとき「しまった」と思われた方も多いでしょう。
典型論点なんですが、手薄なところです。ここは
、「履行遅滞に陥る時期」とセットで覚えておく必要があります。
LECの
完全整理択一六法 民法をお持ちの方は、P108に表がありますので、ぜひチェックしておいて下さいね。
アは、期限の到来のときなので、×です。期限到来時から、債権者は権利行使できますからね。ちなみに、遅滞の時期は異なっているので、412Ⅱを見ておいて下さい。
イも×ですね。本来の債務の履行(原状回復義務)を請求できるときからです。
これが、すぐに判断できない人は、次の2つの基本事項から判断してください。①債務不履行による損害賠償請求権は、本来の債務の履行を請求できるときから進行する
これは基本知識ですよね。覚えてない方はいますぐ、覚えてください。
②契約解除による原状回復請求権の消滅時効は、解除権行使の時から進行する。
この2つをあわせると、もともとの債務と原状回復請求権は=ではない
しかし、原状回復請求権(本来の債務)と、その債務の履行不能による損害賠償請求権は同一
だから、本来の債務の履行(原状回復義務)を請求できるときから時効は進行する。
というわけになります。
ロジックを一つ一つ踏んだほうが、自分の思考に合う人は、このように考えてください。
ウの選択脚ですが、まず、無断転貸を理由とする解除がいつからできるかが問題です。
これはもちろん、転借人が使用収益を開始したときからですよね。
とすれば、このときから権利行使できるから、消滅時効も進行する。
○ということになります。
エは、少し特殊です。イで解説した①のロジックを判例は取っていません。あくまで、損害発生時から進行するとしています(被害者救済の観点)。だから○。
但し、自信がなければ、この肢は△と判断して次に行きましょう。
オですが、
割賦金債務の消滅時効についてはしっかり理解されているでしょうか。
2パターンあります。債権者の請求によらずに直ちに残債務全額を弁済すべき約定の場合には、残債権全額の消滅時効は、債務者が弁済を怠ったときから進行します。
しかし、本肢のように「債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべきものとする約定」があるときには、債権者の請求の意思表示があったときから、消滅時効が進行します。
なぜなら、弁済を怠った時から進行させると、弁済を怠った債務者に有利になってしまうからです。×です。
従って、答えは4になります。
いずれも重要な選択肢でした。わからなかったところがあれば、よく復習しておいて下さい。
そして、同じ知識が出るとは限らないので、短答は、知識を身につけることも重要ですが、解き方の思考を身に着けることも重要です。
この記事が役立ったという方は、下のランキングへのクリックをお願いします。
司法試験 ブログランキングへ
にほんブログ村
