実務のイメージは司法試験に有用か
昔から、よくある議論ですが、「司法試験を教える講師は、実務家である必要があるか?」という問題があります。
例えば、LECの岩崎講師や、アガルートの工藤講師は、実務家ではありませんが、有名な司法試験講師です。
一方で、司法試験講師でかつ実務家(基本的には弁護士)の講師も数多くいらっしゃいます。
実務家の方がわかりやすい講義をできるか、これは人によりますし、ケースバイケースでしょう。
私は、かつて、司法試験(や予備試験合格)に、実務のイメージは必要ないと思っていました。
しかし、実務家になってから、がらっと意識が変わりました。
少なくとも、民訴・刑訴については、実務のイメージができたほうが圧倒的に有利だと。
例えば、民訴の有名な論点に、
「裁判上の和解を債務不履行解除した場合、和解を無効として、続行期日の指定の申立てができるのか、新訴提起しなければならないか、という問題があります」
次のような具体例を考えてみてください。
Case) Xは、Yから暴行を受けたとして、Yに対し150万円の損害賠償請求をした。弁論準備期日で和解の話が出たとき、裁判官は「Yからの暴行があったと思うが、150万円は損害賠償額として高額すぎる。せいぜい50万円くらいではないのか」と言われ、YからXに50万円支払われることで、和解が成立した。
YからXの代理人弁護士に、和解成立から1か月以内に50万円が振り込まれることになったが、振込はなかった。
この場合、Xとしては、まず和解調書に基づき、Yに金50万円を請求していくことになります。
また、Xとしては、和解だから50万円という低額の損害賠償でも納得をしたが、和解でまとまらないならば、もっと請求したいという気持ちもあるでしょう。そんな場合は、和解を解除して、新訴提起することになります。
ここで、裁判上の和解を債務不履行解除した場合、期日申立ができるのが、新訴提起すべきなのかという論点が絡んでくるわけです。
期日申立は、今までの裁判の続きをやるということです。裁判官が同じなら、暴行があったという心証も引き継がれるでしょう。有利に裁判を進めていた者にとっては、こっちのほうがよさそうです。(ただ、Xに不利な心証も当然引き継がれるわけですから、諸刃の剣とも言えますが)
一方、新訴提起になると、新しい裁判官が一から心証形成するわけです。
このように、実務のイメージがあると、民訴や刑訴の「この論点の実益や影響力」がわかるわけです。
ちなみに、実務では、席上交付(和解と同時にお金を払うこと)も行われます。そうすれば、この論点は出てこなくなりますね。
司法試験・予備試験受験生のみなさん、今は予備試験の科目で民事実務・刑事実務科目もあるので、(わかる限りで結構ですが)実務をイメージしながら学習を進めてください。民訴・刑訴の学習に深みがでるはずです。
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