令和2年度 予備試験論文憲法の解答例
(こちらは、司法試験、予備試験受験生向けのブログです)。
昨日、LECの予備試験分析会に出席していただいた方お疲れ様でした。
(そのうち動画はyoutubeにアップされます。アップされたらこのブログにも貼ります)
そちらで、池袋本校の支店長が案内していたとおり、このブログで講師の解答例を載せます。
あくまで、私の私見です。また、明確性の原則を本番なら(時間の関係上)落とすかもといいましたが、そこも
軽く書きました。ご参考にしてください。
↓ちなみに問題文はここからダウンロードしてください↓
http://www.moj.go.jp/content/001330819.pdf
第1 明確性の原則
当該立法は、表現の自由に根源がある取材の自由を制約し、また、刑罰につながるものである。表現の自由(21条1項)の規制立法および刑罰法規(31条参照)は、公権力による恣意的な規制を防ぎ、また萎縮効果を防ぐために、明確性が必要である。そして、規制文言が明確か否かについては、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決せられるが、犯罪被害者等の定義も明確であり、禁止行為も例示とともに示されていることに鑑みると、当該基準を満たす。従って、明確性の原則には反しない。
第2 憲法21条1項違反について
1 権利性
(1)取材の自由
当該立法は、取材活動を制限しているように思えるが、そもそも取材活動の自由は憲法上の権利なのか。取材は報道の前提なので、まず報道の自由から考察する。
報道は、思想や意見の発表ではなく、事実の発表にすぎないとも思え、政治的表現を念頭においた憲法21条1項の対象でないとも思える。しかし、報道の自由は、国民の知る権利に奉仕する重要なものであり、人権として認める必要性がある。また報道の前提としての編集作業には、思想の取捨選択という側面がある以上、思想の表現ともいえる。従って、報道の自由は憲法21条1項により保障される。
そして、取材の自由は報道の自由の前提であり、報道の自由の実質的な確保として不可欠である。とすれば、取材の自由も憲法21条1項により保障される。
(2)取材の自由の性質
取材の自由は、国民の知る権利に奉仕するという意味で重要である。そして、国民の政治的意思決定に貢献するという意味で極めて重要な権利である。
一方、メディアスクラムに見られるように取材対象者の人権を侵害することもあるので、制約の必要性もある。
2 権利制約
(1)権利制約の有無
では、当該立法は、報道機関の取材の自由を本当に制約しているのか。当該立法は、犯罪被害者に取材及び取材目的での接触をするにあたり、被害者の同意を必要とし、同意を得る機会を公権力に一元化するものである。しかし、取材というものは、そもそも取材対象者の承諾を得て行うものであり、当該立法が報道機関の取材の自由を何ら制約していないとも思える。
この点、報道機関は取材をするにあたり、元来、取材を拒否していた対象者に対し、粘り強く説得を試み、交渉する結果、取材できることもある。取材は、社会の隠されている、しかし重要な事実を明らかにする意義があり、このような試みは正当なものである。とすれば、報道機関が取材対象者に直接接触し、説得することは、取材の成功に直結する点に鑑みると取材の自由の一環であると考えるべきである。従って、当該立法は、報道機関の取材の自由を制約している。
(2)権利制約の程度
まず、当該立法は、同意なき取材や取材目的の接触を直接処罰するのではなく、中止命令を出して、その命令に違反すれば処罰されるといったものである。さらに、被害者が取材等中止命令の解除をすることもでき、また、犯罪被害者の同意がある場合にはそもそも取材等の禁止が適用されない。加えて、取材等中止命令の発動にあたっては、憲法上適正な手続が履践されている。これらのことを踏まえれば、当該立法は、報道機関の取材の自由に一定程度配慮した穏やかな規制ともいえる。
一方で、取材のための説得が直接できないというのは、そもそも取材ができなくなる可能性を高めるものであって、それなりに厳しい規制と言える。
上記を総合考慮すると、中程度の厳しさといえる。
3 違憲審査基準
(1)基準
当該立法の合憲性を判定する基準は、制約の対象となる権利の性質と制約態様を考慮して決する。前述のとおり、権利は極めて重要だが、制約の必要性も一定程度あり、制約態様は中程度である。とすれば、中間審査基準の中でもやや厳格なLRAの基準(目的が重要なことを前提として、より選びうる制限的な手段があれば違憲)を用いるべきである。
(2)あてはめ
ここで、当該立法目的は、悲嘆の極みというべき状況にある犯罪被害者およびその家族に対し、取材活動が過熱・集中することによって犯罪被害者や家族の生活の平穏が害されることを防止する点にある。悲しみに打ちひしがれている犯罪被害者の生活の平穏を害することは、まさに人格権(憲法13条参照)侵害ともいうべきであって、立法目的は重要と言える。一方で、取材活動の過熱・集中は、取材の方法や態様を規制することによっても実現可能であって、報道機関による取材交渉を一律に制限し、捜査機関に一元化するまでの必要性はない。また、捜査機関と報道機関は時に対立することもあり、捜査機関への一元化は望ましくなく、不必要に強力な規制と言える。
4 結論
よって当該立法は違憲である。
憲法論文は難しいけど、一回書き方をつかめば、知識があまりなくても書けます。
頑張りましょう。
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あくまで、私の私見です。また、明確性の原則を本番なら(時間の関係上)落とすかもといいましたが、そこも
軽く書きました。ご参考にしてください。
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http://www.moj.go.jp/content/001330819.pdf
第1 明確性の原則
当該立法は、表現の自由に根源がある取材の自由を制約し、また、刑罰につながるものである。表現の自由(21条1項)の規制立法および刑罰法規(31条参照)は、公権力による恣意的な規制を防ぎ、また萎縮効果を防ぐために、明確性が必要である。そして、規制文言が明確か否かについては、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決せられるが、犯罪被害者等の定義も明確であり、禁止行為も例示とともに示されていることに鑑みると、当該基準を満たす。従って、明確性の原則には反しない。
第2 憲法21条1項違反について
1 権利性
(1)取材の自由
当該立法は、取材活動を制限しているように思えるが、そもそも取材活動の自由は憲法上の権利なのか。取材は報道の前提なので、まず報道の自由から考察する。
報道は、思想や意見の発表ではなく、事実の発表にすぎないとも思え、政治的表現を念頭においた憲法21条1項の対象でないとも思える。しかし、報道の自由は、国民の知る権利に奉仕する重要なものであり、人権として認める必要性がある。また報道の前提としての編集作業には、思想の取捨選択という側面がある以上、思想の表現ともいえる。従って、報道の自由は憲法21条1項により保障される。
そして、取材の自由は報道の自由の前提であり、報道の自由の実質的な確保として不可欠である。とすれば、取材の自由も憲法21条1項により保障される。
(2)取材の自由の性質
取材の自由は、国民の知る権利に奉仕するという意味で重要である。そして、国民の政治的意思決定に貢献するという意味で極めて重要な権利である。
一方、メディアスクラムに見られるように取材対象者の人権を侵害することもあるので、制約の必要性もある。
2 権利制約
(1)権利制約の有無
では、当該立法は、報道機関の取材の自由を本当に制約しているのか。当該立法は、犯罪被害者に取材及び取材目的での接触をするにあたり、被害者の同意を必要とし、同意を得る機会を公権力に一元化するものである。しかし、取材というものは、そもそも取材対象者の承諾を得て行うものであり、当該立法が報道機関の取材の自由を何ら制約していないとも思える。
この点、報道機関は取材をするにあたり、元来、取材を拒否していた対象者に対し、粘り強く説得を試み、交渉する結果、取材できることもある。取材は、社会の隠されている、しかし重要な事実を明らかにする意義があり、このような試みは正当なものである。とすれば、報道機関が取材対象者に直接接触し、説得することは、取材の成功に直結する点に鑑みると取材の自由の一環であると考えるべきである。従って、当該立法は、報道機関の取材の自由を制約している。
(2)権利制約の程度
まず、当該立法は、同意なき取材や取材目的の接触を直接処罰するのではなく、中止命令を出して、その命令に違反すれば処罰されるといったものである。さらに、被害者が取材等中止命令の解除をすることもでき、また、犯罪被害者の同意がある場合にはそもそも取材等の禁止が適用されない。加えて、取材等中止命令の発動にあたっては、憲法上適正な手続が履践されている。これらのことを踏まえれば、当該立法は、報道機関の取材の自由に一定程度配慮した穏やかな規制ともいえる。
一方で、取材のための説得が直接できないというのは、そもそも取材ができなくなる可能性を高めるものであって、それなりに厳しい規制と言える。
上記を総合考慮すると、中程度の厳しさといえる。
3 違憲審査基準
(1)基準
当該立法の合憲性を判定する基準は、制約の対象となる権利の性質と制約態様を考慮して決する。前述のとおり、権利は極めて重要だが、制約の必要性も一定程度あり、制約態様は中程度である。とすれば、中間審査基準の中でもやや厳格なLRAの基準(目的が重要なことを前提として、より選びうる制限的な手段があれば違憲)を用いるべきである。
(2)あてはめ
ここで、当該立法目的は、悲嘆の極みというべき状況にある犯罪被害者およびその家族に対し、取材活動が過熱・集中することによって犯罪被害者や家族の生活の平穏が害されることを防止する点にある。悲しみに打ちひしがれている犯罪被害者の生活の平穏を害することは、まさに人格権(憲法13条参照)侵害ともいうべきであって、立法目的は重要と言える。一方で、取材活動の過熱・集中は、取材の方法や態様を規制することによっても実現可能であって、報道機関による取材交渉を一律に制限し、捜査機関に一元化するまでの必要性はない。また、捜査機関と報道機関は時に対立することもあり、捜査機関への一元化は望ましくなく、不必要に強力な規制と言える。
4 結論
よって当該立法は違憲である。
憲法論文は難しいけど、一回書き方をつかめば、知識があまりなくても書けます。
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