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民訴の答案において一般論を書くか否か

今回のブログ記事は、司法試験や予備試験の論文の勉強がそれなりに進んだ人向けです。

さて、司法試験や予備試験の民訴論文で、よく議論になるのが「一般論を書くか否か」

例えば、既判力の一般論はこんな感じです。

既判力とは、前訴の後訴に対する拘束力を言う。既判力が認められる趣旨は、手続保障が与えられたことによる自己責任により許容される点、また、紛争の蒸し返しを防ぐという必要性にある。

これを答案で書くと評価されるのか?
評価されるからどんどん書け派と、点数が付かないから書かない派によく分かれます。

ここで、平成25年司法試験民事訴訟法の出題の趣旨を見てみましょう。

設問に対する解答を超えて「そもそも当事者適格とは‥」といった当事者適格の一般論を論じても特に評価の対象とはしない。 本件事案への当てはめに関しては,登記の移転により遺言の執行が終了したこと及び遺贈目的物の管理処分権が受遺者に帰属していることの二点を指摘すべきであり,仮に遺言執行者が当事者適格をもち続けることとなれば,遺言執行者がいつまでも相続紛争から解放されないこと になって不都合であるといった指摘があれば評価できる

つまり、設問に関係ない一般論を書いても評価しない。しかし、設問に関係する(論じる実益がある)一般論を書くと評価されるということです。

これから、民訴の答案を書くときは、設問に関連する一般論(既判力とか当事者適格とか処分権主義とか)を厚く書いてみてください。

民訴の論文はどうせ時間が余るはずなので、設問に関係する限りで厚く書きましょう。

また、この話を踏まえて、平成25年度民事訴訟法(民事系第3問)設問2 をまだ書いてない人は書いてみてください。

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地味だけど心裡留保が改正された

2020年4月1日に、改正民法が施行されました。
債権法改正が反映されました。

この改正は、危険負担とか、契約不適合責任、詐害行為取消権など、派手な改正に目が行きがちですが、実は総則等の細かいところまで改正されています。

本日は、心裡留保の第三者保護規定についてお話しましょう。
ブログで読む程度がちょうどいい?くらい細かい話ですが、一応対応しておく必要があります。

第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 2項が新設されました。94条2項と同じような規定です。次のようなケースで理解を深めておきましょう。


Case)Aは、本当は売るつもりがないのに、中古のビンテージ車両をBに売るといい、Bは買うといった。但しBは心裡留保につき悪意である。そして、Bは車両代金の500万円をAに払い、当該車両の引き渡しを受けた。なお、かかる車両は道路運送車両法上の登録を受けていたが、所有者をBに移す手続きはしていない。その後、Bは心裡留保につき善意のCに当該車両を売り、引き渡した。
 一方、Aは、登録上の所有者が自己であることを奇貨とし、当該車両をDに売却した。

 当該車両の所有権は、Cが取得するのでしょうか。Dが取得するのでしょうか。
これは、民法94条2項の解釈が参考になるでしょう。
 まず、Bは心裡留保につき悪意なので、AB売買は無効です(93Ⅰ但)。
しかし、当該無効は善意の第三者であるCに対抗できません(93Ⅱ)。
 ここで、善意の第三者Cが出現すると、AB間の売買契約が有効になるのではなく、93条2項の効果として、Aから直接、当該車両の所有権がCに移転します(いわゆる法定承継取得説)。
 とすれば、A→C、A→Dの二重譲渡類似の関係となりますので、CとDの優劣は、自動車の登録で決するわけです。
(先に登録を得た方が勝ち)。

 民法94条2項にも同様の論点がありましたね。
 理解が不十分な方は、この機会に、法定承継取得説をマスターし、それにまつわる要件事実も復習しておいてください。

 それでは今日はこの辺で。

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民法総則の無料講義(初学者向け)

(司法試験、予備試験受験生向けのブログです)

先日、LEC池袋本校から、ライブ配信したものの録画になりますが、

民法プレ編 と 民法総則第1回目
の講義を無料で公開しております。

もちろん、レジュメもPDFでダウンロードできます。
さらに、民法総則のレジュメは、総則の最後までダウンロードできます。

この機会に、無料で民法総則をマスターしてしまいましょう。

徹底的に具体例にこだわる講義になっております。
実際に司法試験、予備試験の論文に出るのは事例問題。
法律は具体例の中で生きてきます。

民法プレ講義



レジュメはこちら
https://www.lec-jp.com/shihou/yobi/guidance/pdf/index/LU20242.pdf


民法第1回


レジュメはこちら
https://www.lec-jp.com/shihou/yobi/guidance/pdf/index/LU20243.pdf

なお、レジュメは昨年のものから若干修正(かつわかりやすく)しておりますので、昨年までの受講生もぜひどうぞ。

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入門講座民法 ライブ配信

コロナ禍で、司法試験・予備試験受験生の方はご苦労されていると思います。

明日から、司法試験入門講座 民法第1回目が始まります。

通常、第1回目の講義は無料体験ができるのですが、緊急事態宣言を受け、ライブでの無料体験はできないことになっております。
(録画での体験をご希望の方は、LECに問い合わせてみてください)

しかし、第1回目の講義は、収録をします。
そこで、収録を、Youtubeライブ配信することにいたしました。

また、第1回目の講義を聞く前に、知っておいて欲しい「民法の基礎知識」を、プレ講義としてまとめました。

配信日時は以下のとおりです。
2020/4/17(金)15:15~16:00 入門講座 民法プレ講義
2020/4/17(金)16:30~19:30 入門講義 民法第1回

動画へは、以下のLECのホームぺージからアクセスしてください。

2年合格コース 武山クラス

ちなみに、私も含む、LEC専任講師からのメッセージもございますので、ぜひご覧ください。
司法試験・予備試験の試験延期を受けて

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司法試験と予備試験の延期を受けて

コロナの影響を受け、2020年度の司法試験と予備試験が延期になりました。

5月の試験を前に、動揺している受験生の方も多いと思います。

しかし、やるべきことは変わりません。
在宅の要請があり、家での学習が中心となりますが、ぜひ目標に向かって、変わらず頑張っていただきたいと思います。

ただ、司法試験の場合は、学習法はあまり変わらないのですが、予備試験の場合は、短答式試験と論文式試験の比重が問題になってきます。

そこで、司法試験の方向けと、予備試験の方向けに、これからの学習法について解説する動画を収録しました。
ぜひご覧ください。

司法試験延期を受けて何をすべきか


予備試験延期を受けて何をすべきか


ぜひこの動画を参考にして、学習を続けていってください。

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入門講座の受講生へ

2020年度、司法試験入門講座が始まりましたが、緊急事態宣言を受け、少なくとも5月6日までの講義は、すべてWebもしくはDVDで受講していただくことになりました。

受講生の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただけると幸いです。

そこで、復習の方法等が気になると思いますので、動画で解説をいたします。



これをご覧になり、学習を進めていってください。
また、受講生の方にはZoomを用いた質問・個別面談ができるようにするつもりです。
詳細が決まり次第、またお知らせいたします。

なお、コロナウイルス関連のLECの対応に関しましては以下のペーゾをご覧ください。
新型コロナウイルス感染症への対応について

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時事問題から考える行政法の問題(解答例)

(これは司法試験、予備試験受験生向けのブログです)

前々回のブログで、時事問題から考える行政法の問題として、出題をしました。
この記事は、当該問題の解答例になります。
あくまで、解答「例」です。一つの考え方にすぎませんが、ぜひ参考にしてください。

設問1
1、論拠
 処分(行政事件訴訟法(以下「行訴」とする)3条2項)とは、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、その行為によって、国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(注1)。
 ここで、本件閉鎖指示は、法律に基づいて一方的になす国の行為である。とすれば、法律上、当該行為によって、「国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定」するか否かが問題となる。
 この点、本件指示は、「Aウイルス特別措置法」に基づく非常事態宣言が前提となっている。
 そして、非常事態宣言の要件の中に、「Aウイルスが蔓延」していることが入っているので、本件閉鎖指示は、「Aウイルスが蔓延」している中、国民の生命・身体を守るために出されるものであり、国民に対し指示が公表されることに鑑みると、「当該飲食店に行くべきではない」「当該飲食店は国のために閉鎖されるべきである」という強いメッセージを伝えるものである。そして、このようなメッセージを受け取った国民の多数が、たとえ飲食店が閉鎖されなくとも、当該飲食店を少なくとも閉鎖指示期間の間は利用しなくなることを考えると、当該指示は、実質的にみて営業権を侵害するものと言える(注2)。
 とすれば、実質的に見て、本件指示は、法律上指示を受けた国民の営業権を侵害するものといえ、処分といえる。
2、訴訟選択
 閉鎖指示処分の差止訴訟(行訴3条7項)を提起し、あわせて仮の差止の申立(行訴37条の5第2項)をすべきである。
設問2
1、論拠
 当該閉鎖指示は、直接強制もできないし、罰則もないので間接強制もない。指示を受けたことが公表されるとはいえ、公表は事実上の処分である。とすれば、閉鎖指示を受けたことによって受ける国民の営業権侵害は、あくまで「事実上」のものであって「法律上」のものではない。よって、当該閉鎖指示は処分にあたらない。
2、訴訟選択
 閉鎖指示を受ける地位にないことを確認する実質的当事者訴訟(行訴4条後)を提起すべきである。また、そのような地位にあることを保全するために、仮の地位を定める仮処分(民事保全法23条2項)の申立てをすべきである。
 なお、当該実質的当事者訴訟は、そもそも処分でも公権力の行使にあたる行為(行訴44条参照)でもないし、行政庁の処分を先決関係に持つものでもないので、行訴44条の適用はない。
設問3
 「行政手続法の不利益処分の規定は適用除外とする」との規定がある場合、当該規定は処分性を認める方向に動く要素となる。すなわち、不利益処分の規定を適用除外とする規定をわざわざ設けるということは、本件閉鎖指示が「不利益処分」であることを、法律が認めていることになるからである。
 併せて、「行政不服審査法の規定は適用しない」との規定がある場合も、当該規定は処分性を認める方向に動く要素となる。なぜなら、行政不服審査の対象は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」であるが、法が、本件閉鎖指示を「処分」として認めているともいえるし、一方で、本質的には「処分」ではなくとも、法が、行政争訟で争わせようと考えたとも言えるからである。

注1)処分の定義は必ず書けるようにしておくこと
注2)憲法と同じ論拠だが、実質的に見て法律上営業権を侵害するものになると言えれば、処分性が認められる方向に動く(もちろんこれだけでは決まらないが)

ぜひこれを一つの参考にして、行政法の学習を進めていって下さい。

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Zoomで受講相談と質問を受け付ける予定です

(これは司法試験・予備試験受験生向けのブログです)

外出が厳しくなっているご時世ですが、Zoomで受講相談を始める予定です。

また、決まり次第ご連絡いたします。

それに合わせて、入門講座受講生(過去の受講生を含む)には、Zoomで質問もできるようにする予定です。

これも決まり次第ご連絡いたします。

受験環境は厳しくなってまいりましたが、一歩一歩、学習を進めていきましょう。

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時事問題から考える行政法の問題

(これは司法試験・予備試験用のブログです)

 行政法は、時事ネタが題材になるというよりは、判例が題材になることが多いです。ただ、憲法でも問題演習をしたので、行政法の観点からも検討しておきましょう。事例は憲法と同じですが、問われていることが違います。

 さすがに本試験の形式に合わせることはできなかったですが、参考までに解いてみてください。解答例は後日ブログにアップします。

[行政法]
 20XX年、Aウイルスによる感染症が世界中で蔓延していた。Aウイルスは、感染すると8割の人が軽症ですむものの、5%ほどの人は重症化し、死亡率は1%である。また、現段階で有効な治療薬はない。Aウイルスは感染者の咳等から飛沫感染するので、感染疑いのある者を隔離することが、予防には有効だとされている。
 そこで、時の内閣は「Aウイルス特別措置法」を提案し、両議院の議決により法律となった。「Aウイルス特別措置法」の内容は以下のとおりである。立法目的は、Aウイルス感染症の蔓延を防止し、国民の生命・身体を守り、経済的復旧をすみやかにはかるものとする。
・Aウイルスが蔓延した際には、内閣総理大臣は非常事態宣言を出すことができる。非常事態宣言が出た場合は、内閣総理大臣は、学校や飲食店等人の集まる施設に対し、閉鎖指示を出すことができる。但し罰則はないが、閉鎖指示が出たことは公表される(従っても従わなくても公表される)。また、閉鎖指示に引き続き何らかの処分が予定されているわけではない。

設問1
 閉鎖指示に処分性があるという立場にたって、その論拠を述べよ。また、閉鎖指示に処分性がある場合、指示が出される恐れのあるものは、どのような訴訟で争うことができるか述べよ(訴訟選択のみ述べればよい)。
設問2
 閉鎖指示に処分性がないという立場にたって、その論拠を述べよ。また、閉鎖指示に処分性がない場合、指示が出される恐れのあるものは、どのような訴訟で争うことができるか述べよ(訴訟選択のみ述べればよい)。
設問3
 仮に「Aウイルス特別措置法」に「行政手続法の不利益処分の規定は適用除外とする」「行政不服審査法の規定は適用しない」との規定があった場合、処分性の肯否に影響するか。理由を付けて述べよ。

 ぜひ検討してみてください。
 解答例はこちらになります。

 時事問題から考える行政法の問題(解答例)

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コロナ問題から考える憲法(司法試験)の問題の解答例

(これは司法試験・予備試験受験生向けのブログです)

 憲法では、時事をテーマにとった問題が出題されることがあります。
また、現実社会においては、仕方ない側面もあるのですが、飲食店の売り上げが激減しているなどの問題もあります。

そこで、前回のブログで、
コロナ問題から考える憲法(司法試験)の問題

を出題させていただきました。
本日は、その解答例と解説になります。あくまで一つの筋道です(憲法はロジックがとおっていれば、点数がつきます)
また、コメントは(注)として下に書いてあります。

設問1
小問1
 憲法29条1項は、財産「権」と書いてあるので、個人の具体的財産権を保障している。そして、Xが受けた閉鎖指示は、あくまで「指示」であり罰則もない。とすれば、そもそも財産権侵害があるのか問題となる(注1)。
 確かに、当該閉鎖指示は、直接強制もできないし、罰則もないので間接強制もない。しかし、本件閉鎖指示は、「Aウイルス特別措置法」に基づく非常事態宣言が前提となっている。
 そして、非常事態宣言の要件の中に、「Aウイルスが蔓延」していることが入っているので、本件閉鎖指示は、「Aウイルスが蔓延」している中、国民の生命・身体を守るために出されるものであり、国民に対し指示が公表されることに鑑みると、「当該飲食店に行くべきではない」「当該飲食店は国のために閉鎖されるべきである」という強いメッセージを伝えるものである。そして、このようなメッセージを受け取った国民の多数が、たとえ飲食店が閉鎖されなくとも、当該飲食店を少なくとも閉鎖指示期間の間は利用しなくなることを考えると、当該指示は、実質的にみて営業権を侵害するものと言える。
 そして、当該指示を受けた飲食店は、利用客の減少を見越して自主的に閉鎖をすることも十分に考えられるので、閉鎖指示に自主的に従うか否かに関わりなく、閉鎖指示を受けたこと自体、営業権という財産権侵害になる。(注2)従って、Xの財産権侵害はある。
 それでは財産権侵害があるが、いかなる場合に損失補償が必要か(29条3項)、明文なく問題となる。
 この点、29条3項の趣旨は、①公共のために生じた損失を社会一般の負担に転嫁するという平等原則(14条)および②29条1項による個人の財産権の保障の徹底にある。とすれば、特別の犠牲を負った者には、金銭によってその損害を埋め合わせすべきと解する。 そして、特別の犠牲にあたるためには、①制限が特定人を対象としており、②制限が受忍限度を超える程度の強度のものである必要がある。
 ここで、閉鎖指示は東京都内の全ての飲食店に対し出ている。これを全国に比べ「東京都だけ」が指示を受けていると考えれば特定人にあたるし、「東京都は全て」閉鎖指示を受けていると考えれば特定人にあたらない(注3)。
 この点、一般的抽象的法規範による権利侵害と同視できるならば、それは法律や条例による権利の制限と同様であり、特定人を対象とするものとはならない。そして、条例で財産権を制限することは可能であるが(判例同旨)、東京都内の全ての飲食店に対する閉鎖指示は、(主体は違うが)条例による財産権侵害と同視できるので、一般的抽象的法規範によるものと同様である。とすれば、①特定人を対象とするとは言えない(注4)。
 よって、損失補償は不要である。
小問2
 小問1で述べたように、閉鎖指示に従うか否かにかかわらず、Yに対する財産権侵害はある。しかし、閉鎖指示が東京都内の全ての飲食店を対象としているので、損失補償は不要である。
小問3
 小問1で述べたのと同様、Zへの財産権侵害はある。そして、Zの店舗のみ閉鎖指示が出ているので、①制限が特定人を対象としているといえる。しかし、本件閉鎖指示の原因は、Zの飲食店からAウイルスの患者が発生したためである。財産権の側に規制を受ける原因があり、そのような場合に規制を受けることは、財産権に内在する制約として、②制限が受任限度を超える強度のものとは言えない。
 この点詳述すると、Aウイルスが蔓延している中、飲食店を営業すると、利用者の中でAウイルスの患者が発生する危険性はある。当該危険性は、飲食店を営業することで不可避的に発生するものであり、その危険は、飲食店営業に内在するものといえるので、営業者側が負担すべきということである。
 よって損失補償は不要である。しかし、閉鎖指示の「1か月」という期間が、閉鎖指示の目的に照らし不相当に長い場合は、その不相当な部分だけは、②制限が受忍限度を超える程度の強度のものといえるので、損失補償が必要である。(注5)
設問2
 設問1で述べたとおり、閉鎖指示を出すこと自体、財産権の制約になっているので、罰則が付くか否かで、損失補償に対する結論は変わらない(注6)
設問3
 Wの不動産所有権が侵害されているので、財産権(29条1項)侵害はある。そして、Wの不動産所有権が狙い撃ち的に侵害されているので、①特定人を対象とするものであるし、所有権そのものの利用が制約されており、その原因は財産権の側にないので②制限が受任限度を超える強度のものといえる。従って、Wに対する損失補償は必要である。
 そして、損失のすべてを補償しなければ、公共のために生じた損失を社会一般の負担に転嫁するという29条3項の趣旨に反するので、国はWの損失全て、具体的には一時的使用なら賃料相当額を、所有権自体のはく奪なら不動産の時価を補償する必要がある。
 また、法律には損失補償規定はないが、被侵害利益の時価を基準として,権利内容を明確にできるので、Wは憲法29条3項に基づいて国に損失補償を請求できる。

(注1) そもそも権利侵害(制約)がなければ、損失補償も不要。権利侵害があるか否かは、司法試験で結構問われているので注意。憲法理論というよりは、認定の問題である。
(注2) ここは、結論が分かれる(権利侵害がないという結論も可能)。権利侵害があるとするなら、事実を拾って「ぐいぐい」自分の結論に向かって評価する。現場思考が大事なので、普段から訓練をしておくとよい。
 また、本来は、財産権侵害があるとすると、次に財産権の制約が許されるかという点を述べて、許される制約なら、その次に損失補償の話になる。ただ、本問では、損失補償のみが聞かれているので、制約が許されるか否かについては触れていない。
 さらに、損失補償が聞かれているので「財産権」侵害として構成したが、「営業の自由」の侵害という構成も考えられる。その場合、損失補償の規定が、営業の自由に適用されるのかという点に触れなければならない。
(注3) たぶんこの点が気になった人は多いであろう。気になった点は、そこが争点になるので、わかりやすい言葉で書くことが重要である。このような争点に触れない結果、点数が伸びない人が多い。
(注4) 東京都内の飲食店全体の閉鎖指示は、条例による財産権侵害のようなものなので、特定人に対する財産権侵害にはならないというロジックである。現場思考型だが、統治のロジックを使って人権を論じることもしばしばある。また、行政法的思考でもよい(例えば、都市計画などの一般的抽象的法規範に類するものは処分性がない→個別具体的とはいえない→特定人に対するものじゃない、みたいに)。
(注5) 本問では関係ないが、期間が不相当に長い場合は、営業の自由や財産権に対する侵害として(損失補償以前に)違憲になる可能性がある。
(注6) 通常の問題では、損失補償の前に、財産権制約として許されるかを論じるが、制約態様が強度だとして、そちらの結論が変わる可能性はある。

 コロナ問題が早く終わることを祈念しております。
今年の司法試験・予備試験も実施されるかは不明確ですが、受験される皆様には、体調管理に注意しつつ、学習を進めていっていただきたいです。

※私、武山の行っている司法試験・予備試験入門講座の詳細は以下をご覧ください。

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プロフィール

takeyama

Author:takeyama
知識じゃなくて、リーガルマインドと伝える力
を養成することを目標とする、
LEC東京リーガルマインド司法試験講師武山茂樹のブログです。

近年、司法試験業界でも、まやかしのような勉強法が流行しています。
しかし、起案とその吟味の繰り返しでしか実力はつきません。
私は、起案教育こそが司法試験に役立つとの信念のもと、実務でも通用する正統派の講義を目指します。

新橋虎ノ門法律事務所の共同代表として、弁護士もやっております。
司法試験受験生に役立つ情報を提供していきます。

★その他のブログ等
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