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泉佐野市ふるさと納税訴訟~法律の委任の範囲の問題

泉佐野市が、ふるさと納税制度から除外されたことを争った訴訟で、最高裁において逆転勝訴判決が出ました。
司法試験や予備試験との関係では、「法律の委任の範囲」という論点が関係するので、ブログで紹介いたします。

まず、判決文全文を見たい方はこちらをご参照下さい。
http://www.city.izumisano.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/33/saikousaihanketubun20200630.pdf

※一般の方向けのブログに、ふるさと納税制度と本件判決の概要は記載してありますので、「ふるさと納税制度って何?」
て方や、「そんなに法律詳しくないんだけど」と言う方は、こちらの記事も合わせてご参照下さい。
泉佐野市はふるさと納税訴訟でなぜ逆転勝訴できたのか

 本件記事は、少し専門的な内容になります。

経緯を簡単に解説すると、ふるさと納税を利用した(つまり自治体に寄付をした)場合、返礼品がもらえる場合があります。
ふるさと納税制度は、例えばさいたま県さいたま市に住んでいる人が泉佐野市に寄付をすると、自分の居住している自治体
に納める税金が安くなる制度で、法律上は、返礼品と結びついているわけではありません。

しかし、返礼品を「エサ」に、自分の自治体に寄付金を集めようとする「アイディア」を出す自治体が増えてきました。
なかにはポイントや金券などを与える自治体も多かったので、国が規制をしようとしました。

その規制は、当初は、総務大臣の助言によるものでした。助言の法的性質は、行政指導です。経緯をまとめると

H27.4.1 換金性の高い物、高額なもの、返戻割合の高いものの送付を行わないよう求めた

H29.4.1 返戻割合を3割以内にするよう求めた

H30.4.1 地場産品に限るよう求めた

しかし、競争は一向に収まらないし、行政指導に従わない自治体もいるわけです。

そこで、

H31.3.27 地方税法37条の2、314条の7改正が行われました(施行はR1.6.1)。
 どのような内容かというと、総務大臣の「指定」した地方団体に対する寄付にのみ、「ふるさと納税制度」が適用されると言ったものです。

(寄附金税額控除)
第三十七条の二 道府県は、所得割の納税義務者が、前年中に次に掲げる寄附金を支出し、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が前年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の三十に相当する金額を超える場合には、当該百分の三十に相当する金額)が二千円を超える場合には、その超える金額の百分の四(当該納税義務者が指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の二)に相当する金額(当該納税義務者が前年中に特例控除対象寄附金を支出し、当該特例控除対象寄附金の額の合計額が二千円を超える場合には、当該百分の四(当該納税義務者が指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の二)に相当する金額に特例控除額を加算した金額。以下この項において「控除額」という。)を当該納税義務者の第三十五条及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。この場合において、当該控除額が当該所得割の額を超えるときは、当該控除額は、当該所得割の額に相当する金額とする。
一 都道府県、市町村又は特別区(以下この条において「都道府県等」という。)に対する寄附金(当該納税義務者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益が当該納税義務者に及ぶと認められるものを除く。)
(略)
2 前項の特例控除対象寄附金とは、同項第一号に掲げる寄附金(以下この条において「第一号寄附金」という。)であつて、都道府県等による第一号寄附金の募集の適正な実施に係る基準として総務大臣が定める基準(都道府県等が返礼品等(都道府県等が第一号寄附金の受領に伴い当該第一号寄附金を支出した者に対して提供する物品、役務その他これらに類するものとして総務大臣が定めるものをいう。以下この項において同じ。)を提供する場合には、当該基準及び次に掲げる基準)に適合する都道府県等として総務大臣が指定するものに対するものをいう。
一 都道府県等が個別の第一号寄附金の受領に伴い提供する返礼品等の調達に要する費用の額として総務大臣が定めるところにより算定した額が、いずれも当該都道府県等が受領する当該第一号寄附金の額の百分の三十に相当する金額以下であること。
二 都道府県等が提供する返礼品等が当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務その他これらに類するものであつて、総務大臣が定める基準に適合するものであること。
3 前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を受けようとする都道府県等は、総務省令で定めるところにより、第一号寄附金の募集の適正な実施に関し総務省令で定める事項を記載した申出書に、同項に規定する基準に適合していることを証する書類を添えて、これを総務大臣に提出しなければならない。
4 第六項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない都道府県等は、指定を受けることができない。
(略)

返礼品の額が「3割以下」であること(地方税法37条の2第2項1号)、返礼品が地場産品であること(同項2号)が要求されています。

また、総務大臣が定めた募集適正基準等を定める告示によると
 「H30.11.1から申出書を提出するまでの間に、趣旨に反するような寄付金の募集をし多額の寄付金を受け取った団体でないこと」
が要求されています。

泉佐野市は、H30.11.1から申出書を提出するまでの間に、趣旨に反するような、すなわちH29.4.1とH30.4.1の総務大臣の助言に反した行為を行ったため、
具体的には地場産品以外の返礼品を提供したり、返礼品の提供割合が3割を超えていたため、基準に適合しないという理由で、指定から除外されたのです。
(もう少し細かい話もありますが、大枠はこうなります)。

ここで、最高裁は次のような議論を展開しました。

もし、行政の作った基準が、国民の権利を侵害したり、国民に義務を課すものであれば、それは法律か、法律の委任に基づいた規範である必要があります
(法律留保原則)。

しかし、地方自治体に国が関与することに法律の根拠がいるか否かは、立法政策の問題と言えるため、
 地方自治法245条の2  国は法律又はこれに基づく政令によらなければ地方自治体に関与できない
をまず指摘します。

また、
地方税法37条の2第2項 指定の基準の策定を総務大臣に委ねている
ことから、指定の根拠となった告示が法律の委任の範囲を逸脱しているかどうか検討します。

そして、告示は、本件改正規定施行前の募集実績をもとに、今後は適正な募集がなされるとしても、指定がなされないことを定めていますが、
H30.4.1までの通知は、あくまで通知であって法律や政令ではないこと、地方自治法247条の3が地方自治体が国の助言に従わなかったことをもって不利益扱いをしてはならないことから、告示が法律に基づかない不利益取扱であることを指摘します。

ちなみに別途、過去の実績をもって、不利益取扱できるような告示を定めることができるような趣旨を法律から読み取ることができれば、当該告示は法律の委任の範囲を逸脱しませんが、そのような趣旨を読み取ることもできず、立法過程でもそのような話がなかったことを指摘します。

さらに、泉佐野市が、過去に通知に従わなかったことから、改正法の施行後も、(法令や告示の)基準に反するような募集をする恐れがあると言えれば、
泉佐野市を指定から除外することは、裁量権行使として相当とも言えますが、泉佐野市は法令と告示の拘束力を区別して行動していることが伺われるので、
そのような恐れもないと判断します。

さらに、指定を取り消してから再指定がされないのは2年間だけなのですが、過去の悪事を考慮できるとするのはバランスが悪いと言います。

上記のことを考慮して、告示は法律の委任の範囲を逸脱しているとしました。

予備試験・司法試験の行政法や憲法のあてはめのよい練習になりますので、ぜひ法文に基づいて検討してみてください。


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Author:takeyama
知識じゃなくて、リーガルマインドと伝える力
を養成することを目標とする、
LEC東京リーガルマインド司法試験講師武山茂樹のブログです。

近年、司法試験業界でも、まやかしのような勉強法が流行しています。
しかし、起案とその吟味の繰り返しでしか実力はつきません。
私は、起案教育こそが司法試験に役立つとの信念のもと、実務でも通用する正統派の講義を目指します。

新橋虎ノ門法律事務所の共同代表として、弁護士もやっております。
司法試験受験生に役立つ情報を提供していきます。

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