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令和4年 司法試験 憲法論文解答例

R4 司法試験憲法 ガイダンス用解答例です 正式版はまたアップします。
第1 設問
1 決定①
 まず、Yには、助成金を求める憲法上の権利はない。助成金を求める権利は、自由権ではなく請求権である。請求権は抽象的権利であり、当該権利に関する立法がある際に、その抽象的権利に適合した解釈を求められるだけだが、本件に関しては立法はない。助成金の交付決定は完全なる大学の裁量による。
 次に、Yに助成金を求める憲法上の権利があるとしても、大学の自治の趣旨に鑑み、X大学側には助成金給付決定に関する広汎な裁量があり、助成金の趣旨に合致しないYに支給しなかったことは裁量の範囲内である。
2 決定②
 確かにYには、学問の自由の一環として、講義をする自由及び成績評価の自由がある。一方で、地域経済論はXのB学部の必修科目であり、当該講義を履修し合格しなければ、XのB学部は卒業できない。Yの権利も、学生の権利と抵触する場合には絶対無制約ではない。必修科目である以上、Yの権利は、大学のカリキュラムや制度の範囲内で認められているにすぎない。また、X大学には、大学の自治の趣旨に鑑み、その調停者としての役割が求められている。必修科目の趣旨に鑑み、X大学がなした決定②は、裁量権の範囲内であり、Yの学問の自由の合理的制限と言える。
第2 設問2
1 決定①
 まず、Yは、助成金を求める憲法上の権利があると主張する。その理由として、助成金を受けられる状態が現状であり、それが憲法上保障されているので、その切り下げは学問の自由に対する制約になるというものである。
 確かに、Yの研究は、少なくとも外形上は地域経済に関するものであること、これまで毎年申請すれば交付されてきたこと、A研究所ではこれまで研究員に研究助成が認められなかった例はなかったこと、学問研究は助成を受けなければ困難な事情があること、YはX大学に採用された以上は、大学の設備や費用を使う権利があるとも考えられることから、Yに助成金を交付しないという決定①は、Yの学問の自由を制約する。これは、表現の自由と学問の自由という違いはあるが、船橋氏図書館事件と同様のロジックによる。
 しかし、学問の自由といえども絶対無制約ではなく、公共の福祉による制約を受ける。ここで、学問の自由は、個人的な価値のみならず人類全体に貢献をもたらすという点で社会的な価値の側面を持つこと、公権力による制約を受けやすいことから、保護の必要性は高い。一方で、助成金の不支給という場面にあたっては公権力の裁量は広い。そこで、LRAの基準を用い、より制限的でない手段が存在すれば違憲と解する。なお、Xは県立大学である以上、公権力の行使という側面はあるので、上記の基準を使うことに問題はない。
ここで、Yは団体Cの代表であり、団体CはX県の自然環境の保全の他、工業団地への企業誘致などX県が進めてきた産業政策を、環境を犠牲に産業振興を図っているなどとして批判する活動をも展開している。実際にYは、研究成果を発信するためにA研究所のサーバー上に開設している自身のウェブサイト「Y研究室」において、団体Cの活動を記録した動画と、X県の産業政策に対する批判的なコメントを掲載し、動画には、Yを含む団体Cの構成員が、X県の産業政策の推進に熱心な県議会議員Dらと県庁前で激しく口論する様子や、Yが、環境保護に熱心に取り組む県議会議員らと団体Cの集会で対談する様子などが含まれていた。団体Cの活動は、自然環境の保全のみならず、政治活動の側面を帯びている。また、費用面においても、ウェブサイト「Y研究室」の運営の委託及び実地調査のための国内各地への出張に研究助成金の3分の2以上が支出されているが、ウェブサイトは研究成果の発信のほかにYの政治的な意見表明や団体Cの活動のためにも利用されていること、また出張に際しては、Yが、団体Cと連携して活動している各地の団体に聞き取り調査を行うだけでなく、それらの団体が主催する学習会でX県の産業政策を批判する講演を無報酬で行っていることが判明した。
 Yの活動自体は、政治的活動の側面と、地域経済研究が混在している。しかし、費用面を見ると、3分の2以上は、政治活動と言える。助成金の目的は、「地域経済の振興に資する研究活動を支援する」ことである。半分以上の費用が政治活動に費やされていることを鑑みると、助成金の不支給は、助成金の制度目的である、「地域経済の振興に資する研究活動を支援する」に合致しないものに支給しないことによって、他のより目的に合致する研究を支援することにつながるので、目的達成にとって効果的である。しかし、Yに対し一度、助成金の趣旨に合致するように警告をする、あるいは、不支給決定の前に、支出予定の項目について詳細なヒアリングをし、Yに対し是正の機会を与えるなど、手続面において、より制限的でない緩やかな手段が存在した。その手段を取っていないので、決定①は違憲である。
2 決定②について
<省略>
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知識じゃなくて、リーガルマインドと伝える力
を養成することを目標とする、
LEC東京リーガルマインド司法試験講師武山茂樹のブログです。

近年、司法試験業界でも、まやかしのような勉強法が流行しています。
しかし、起案とその吟味の繰り返しでしか実力はつきません。
私は、起案教育こそが司法試験に役立つとの信念のもと、実務でも通用する正統派の講義を目指します。

新橋虎ノ門法律事務所の共同代表として、弁護士もやっております。
司法試験受験生に役立つ情報を提供していきます。

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