FC2ブログ

コロナ問題から考える憲法(司法試験)の問題の解答例

(これは司法試験・予備試験受験生向けのブログです)

 憲法では、時事をテーマにとった問題が出題されることがあります。
また、現実社会においては、仕方ない側面もあるのですが、飲食店の売り上げが激減しているなどの問題もあります。

そこで、前回のブログで、
コロナ問題から考える憲法(司法試験)の問題

を出題させていただきました。
本日は、その解答例と解説になります。あくまで一つの筋道です(憲法はロジックがとおっていれば、点数がつきます)
また、コメントは(注)として下に書いてあります。

設問1
小問1
 憲法29条1項は、財産「権」と書いてあるので、個人の具体的財産権を保障している。そして、Xが受けた閉鎖指示は、あくまで「指示」であり罰則もない。とすれば、そもそも財産権侵害があるのか問題となる(注1)。
 確かに、当該閉鎖指示は、直接強制もできないし、罰則もないので間接強制もない。しかし、本件閉鎖指示は、「Aウイルス特別措置法」に基づく非常事態宣言が前提となっている。
 そして、非常事態宣言の要件の中に、「Aウイルスが蔓延」していることが入っているので、本件閉鎖指示は、「Aウイルスが蔓延」している中、国民の生命・身体を守るために出されるものであり、国民に対し指示が公表されることに鑑みると、「当該飲食店に行くべきではない」「当該飲食店は国のために閉鎖されるべきである」という強いメッセージを伝えるものである。そして、このようなメッセージを受け取った国民の多数が、たとえ飲食店が閉鎖されなくとも、当該飲食店を少なくとも閉鎖指示期間の間は利用しなくなることを考えると、当該指示は、実質的にみて営業権を侵害するものと言える。
 そして、当該指示を受けた飲食店は、利用客の減少を見越して自主的に閉鎖をすることも十分に考えられるので、閉鎖指示に自主的に従うか否かに関わりなく、閉鎖指示を受けたこと自体、営業権という財産権侵害になる。(注2)従って、Xの財産権侵害はある。
 それでは財産権侵害があるが、いかなる場合に損失補償が必要か(29条3項)、明文なく問題となる。
 この点、29条3項の趣旨は、①公共のために生じた損失を社会一般の負担に転嫁するという平等原則(14条)および②29条1項による個人の財産権の保障の徹底にある。とすれば、特別の犠牲を負った者には、金銭によってその損害を埋め合わせすべきと解する。 そして、特別の犠牲にあたるためには、①制限が特定人を対象としており、②制限が受忍限度を超える程度の強度のものである必要がある。
 ここで、閉鎖指示は東京都内の全ての飲食店に対し出ている。これを全国に比べ「東京都だけ」が指示を受けていると考えれば特定人にあたるし、「東京都は全て」閉鎖指示を受けていると考えれば特定人にあたらない(注3)。
 この点、一般的抽象的法規範による権利侵害と同視できるならば、それは法律や条例による権利の制限と同様であり、特定人を対象とするものとはならない。そして、条例で財産権を制限することは可能であるが(判例同旨)、東京都内の全ての飲食店に対する閉鎖指示は、(主体は違うが)条例による財産権侵害と同視できるので、一般的抽象的法規範によるものと同様である。とすれば、①特定人を対象とするとは言えない(注4)。
 よって、損失補償は不要である。
小問2
 小問1で述べたように、閉鎖指示に従うか否かにかかわらず、Yに対する財産権侵害はある。しかし、閉鎖指示が東京都内の全ての飲食店を対象としているので、損失補償は不要である。
小問3
 小問1で述べたのと同様、Zへの財産権侵害はある。そして、Zの店舗のみ閉鎖指示が出ているので、①制限が特定人を対象としているといえる。しかし、本件閉鎖指示の原因は、Zの飲食店からAウイルスの患者が発生したためである。財産権の側に規制を受ける原因があり、そのような場合に規制を受けることは、財産権に内在する制約として、②制限が受任限度を超える強度のものとは言えない。
 この点詳述すると、Aウイルスが蔓延している中、飲食店を営業すると、利用者の中でAウイルスの患者が発生する危険性はある。当該危険性は、飲食店を営業することで不可避的に発生するものであり、その危険は、飲食店営業に内在するものといえるので、営業者側が負担すべきということである。
 よって損失補償は不要である。しかし、閉鎖指示の「1か月」という期間が、閉鎖指示の目的に照らし不相当に長い場合は、その不相当な部分だけは、②制限が受忍限度を超える程度の強度のものといえるので、損失補償が必要である。(注5)
設問2
 設問1で述べたとおり、閉鎖指示を出すこと自体、財産権の制約になっているので、罰則が付くか否かで、損失補償に対する結論は変わらない(注6)
設問3
 Wの不動産所有権が侵害されているので、財産権(29条1項)侵害はある。そして、Wの不動産所有権が狙い撃ち的に侵害されているので、①特定人を対象とするものであるし、所有権そのものの利用が制約されており、その原因は財産権の側にないので②制限が受任限度を超える強度のものといえる。従って、Wに対する損失補償は必要である。
 そして、損失のすべてを補償しなければ、公共のために生じた損失を社会一般の負担に転嫁するという29条3項の趣旨に反するので、国はWの損失全て、具体的には一時的使用なら賃料相当額を、所有権自体のはく奪なら不動産の時価を補償する必要がある。
 また、法律には損失補償規定はないが、被侵害利益の時価を基準として,権利内容を明確にできるので、Wは憲法29条3項に基づいて国に損失補償を請求できる。

(注1) そもそも権利侵害(制約)がなければ、損失補償も不要。権利侵害があるか否かは、司法試験で結構問われているので注意。憲法理論というよりは、認定の問題である。
(注2) ここは、結論が分かれる(権利侵害がないという結論も可能)。権利侵害があるとするなら、事実を拾って「ぐいぐい」自分の結論に向かって評価する。現場思考が大事なので、普段から訓練をしておくとよい。
 また、本来は、財産権侵害があるとすると、次に財産権の制約が許されるかという点を述べて、許される制約なら、その次に損失補償の話になる。ただ、本問では、損失補償のみが聞かれているので、制約が許されるか否かについては触れていない。
 さらに、損失補償が聞かれているので「財産権」侵害として構成したが、「営業の自由」の侵害という構成も考えられる。その場合、損失補償の規定が、営業の自由に適用されるのかという点に触れなければならない。
(注3) たぶんこの点が気になった人は多いであろう。気になった点は、そこが争点になるので、わかりやすい言葉で書くことが重要である。このような争点に触れない結果、点数が伸びない人が多い。
(注4) 東京都内の飲食店全体の閉鎖指示は、条例による財産権侵害のようなものなので、特定人に対する財産権侵害にはならないというロジックである。現場思考型だが、統治のロジックを使って人権を論じることもしばしばある。また、行政法的思考でもよい(例えば、都市計画などの一般的抽象的法規範に類するものは処分性がない→個別具体的とはいえない→特定人に対するものじゃない、みたいに)。
(注5) 本問では関係ないが、期間が不相当に長い場合は、営業の自由や財産権に対する侵害として(損失補償以前に)違憲になる可能性がある。
(注6) 通常の問題では、損失補償の前に、財産権制約として許されるかを論じるが、制約態様が強度だとして、そちらの結論が変わる可能性はある。

 コロナ問題が早く終わることを祈念しております。
今年の司法試験・予備試験も実施されるかは不明確ですが、受験される皆様には、体調管理に注意しつつ、学習を進めていっていただきたいです。

※私、武山の行っている司法試験・予備試験入門講座の詳細は以下をご覧ください。

武山クラス入門講座

*LECの無料体験講座の案内はこちら*

無料公開講座・実務家講演会のご案内(司法試験受験生向け、中上級)
資格説明会・公開講座 【関東】 (予備・法科大学院受験生向け)
youtube無料体験講義 (予備・法科大学院受験生向け)


司法試験 ブログランキングへ

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ
にほんブログ村


スポンサーサイト



プロフィール

takeyama

Author:takeyama
知識じゃなくて、リーガルマインドと伝える力
を養成することを目標とする、
LEC東京リーガルマインド司法試験講師武山茂樹のブログです。

近年、司法試験業界でも、まやかしのような勉強法が流行しています。
しかし、起案とその吟味の繰り返しでしか実力はつきません。
私は、起案教育こそが司法試験に役立つとの信念のもと、実務でも通用する正統派の講義を目指します。

新橋虎ノ門法律事務所の共同代表として、弁護士もやっております。
司法試験受験生に役立つ情報を提供していきます。

★その他のブログ等
司法試験と予備試験

一般の方向けのブログはこちら
世界一わかりやすい法律の授業を目指すブログ

不動産の法務と税務

起業の法務と税務

民法の初学者向けのブログはこちら
民法を得意にする!

一般の方向けのブログはこちら
世界一わかりやすい法律の授業を目指すブログ

Twitter
→https://twitter.com/takeyam33102813

LECの無料公開講義一覧
無料公開講座・実務家講演会のご案内(司法試験受験生向け、中上級)
資格説明会・公開講座 【関東】 (予備・法科大学院受験生向け)

you tube無料公開講座

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR